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      サステナビリティ

    SSBJとは?

    有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示と第三者保証の義務化に向け企業が今準備すべきこと

    目次

    はじめに

    SSBJとは何か

    SSBJ基準の全体像

    適用対象企業と義務化スケジュール

    第三者保証対応の重要性

    保証業務実施者の要件と登録制度

    企業が今から準備すべきこと

    おわりに

     

    はじめに

    日本企業に対して、有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示と第三者保証が段階的に義務化される動きが進んでいます。企業がこの新しい枠組みを正しく理解しないまま準備を怠ると、開示義務への対応が間に合わず、投資家からの信頼を損なうおそれがあります。

    義務化に備えるうえで欠かせないのは、SSBJ基準の内容、適用スケジュール、そして第三者保証の要件を把握することです。本記事では、SSBJの設立背景から有価証券報告書での開示の枠組み、保証取得に向けた実務上の準備までを順を追って解説します。

    SSBJとは何か

    SSBJ設立の背景と目的

    SSBJ(サステナビリティ基準委員会)は、日本国内の企業向けにサステナビリティ情報開示の基準を開発するための組織です。国際的なサステナビリティ開示基準を策定するISSB(国際サステナビリティ基準審議会)の基準を参考にしつつ、日本国内の事情やニーズに合わせた基準を開発する役割を担っています。SSBJは2022年7月、公益財団法人財務会計基準機構の内部組織として設立されました(参照*1)

    設立の背景には、サステナビリティ情報が投資家の意思決定にとって急速に重要性を増してきた事実があります。財務諸表だけでは把握できないサステナビリティ関連のリスクと機会に関する情報を、体系的に開示する仕組みが求められるようになりました。こうした開示基準の開発や義務化の動きは、日本に限らず、多くの国や地域で進んでいます(参照*2)

    日本で新基準が必要な理由

    日本では2023年3月期から有価証券報告書に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄が新設され、開示の枠組みが一歩進みました。しかし、企業間の開示内容にばらつきがあり、比較可能性や有用性には課題が残されていました。加えて、第三者保証が任意であったため、情報の信頼性についても指摘がなされていました(参照*4)

    気候変動リスクを経営の中核に据えたサステナビリティ情報開示は、2015年のパリ協定とSDGs採択を契機に、国際的な潮流として急速に広がりました(参照*5)。こうした国際的な要請と、国内の開示品質における課題の両方に対応するために、日本独自の統一基準としてSSBJ基準の策定が進められました。

    SSBJ基準の全体像

    ISSB基準との関係性

    SSBJ基準は、ISSBが策定した国際的なサステナビリティ開示基準をベースに開発されています。ISSBが公表したIFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」に相当する部分を日本向けに再構成しており、わかりやすさの観点から、基本となる事項を定める「適用基準」と、コア・コンテンツ(ガバナンス、リスク管理、戦略、指標及び目標に関する開示事項)を定める「一般基準」の2つに分けた構造を採用しています。そして、IFRS S2号に相当する部分を、「気候関連開示基準」として採用しています。(参照*3)

    主な開示要求事項は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言における「ガバナンス」「リスク管理」「戦略」「指標及び目標」の4つの柱からなる構造が適用されています(参照*6)。国際基準と整合しつつも日本企業にとって理解しやすい形に再編されている点が、SSBJ基準の特徴です。

    3つの基準の構成と内容

    SSBJが公表した基準は3つで構成されています。1つ目はサステナビリティ開示ユニバーサル基準「サステナビリティ開示基準の適用」、2つ目はサステナビリティ開示テーマ別基準第1号「一般開示基準」、3つ目はサステナビリティ開示テーマ別基準第2号「気候関連開示基準」です(参照*3)

    ユニバーサル基準はすべての開示に共通する適用ルールを定め、テーマ別基準第1号はサステナビリティ関連のリスクと機会についての一般的な開示事項を網羅しています。テーマ別基準第2号は気候変動に特化した開示を求めるもので、温室効果ガス排出量などの具体的な指標が含まれます。企業はこの3つの基準を組み合わせて、自社に求められる開示内容を整理していくことになります。

    有価証券報告書での開示の枠組み

    SSBJ基準に基づくサステナビリティ情報は、有価証券報告書を通じて開示されます。2023年3月期以降、金融庁は、有価証券報告書等に「サステナビリティに関する考え方及び取組」の記載欄を新設し、「ガバナンス」と「リスク管理」を必須記載事項としました。一方、「戦略」と「指標及び目標」については、重要性に応じた開示を求めてきました(参照*7)

    その後、2026年2月の内閣府令等改正により、一定規模以上のプライム市場上場企業については、SSBJ基準に基づく開示が義務付けられました。これにより、従来の「ガバナンス」「リスク管理」を中心とした開示から、SSBJ基準で定められた「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標及び目標」の4つのコア・コンテンツに基づく、より包括的なサステナビリティ情報の開示へと移行していきます。なお、SSBJ基準は重要性(マテリアリティ)に基づく開示を原則としており、企業にとって重要な情報が開示対象となります。  

    有価証券報告書は、上場企業が毎年公表する法定書類であり、投資家が企業を評価するうえで中核的な情報源です。この法定書類のなかにサステナビリティ情報を組み込むことで、財務情報と非財務情報を一体的に開示し、投資家が両者を関連づけて判断できる仕組みが整えられます。SSBJ基準の義務化に伴い、有価証券報告書でのサステナビリティ情報開示は、任意の取り組みから法的義務へと性質を変えることになります。

    適用対象企業と義務化スケジュール

    時価総額別の段階適用ロードマップ

    SSBJ基準の適用は、プライム市場に上場する企業を対象に、時価総額の規模に応じて段階的に開始されます。金融庁は、時価総額3兆円以上の企業を2027年3月期から、3兆円未満1兆円以上の企業を2028年3月期から、1兆円未満5,000億円以上の企業を2029年3月期から適用を開始するスケジュールを示しました(参照*8)。

    時価総額5,000億円未満の企業へのSSBJ基準の適用については引き続き検討が行われます。また、第三者保証は各区分の開示義務化の翌年から義務化される見通しとなっており、すべての企業規模を対象とする第三者保証の詳細についても検討が続けられています(参照*8))。大規模企業から順に適用が始まるため、自社の時価総額区分を確認し、該当する適用開始年度を把握することが対応の出発点となります。

    経過措置としての二段階開示

    新しい制度への円滑な移行を図るため、経過措置として「二段階開示」の仕組みが設けられます。金融庁の審議会は、SSBJ基準の適用開始年度と、その翌年にあたる第三者保証の導入年度の計2年間を、新たな制度に対応するための準備期間と位置づけました。この2年間が二段階開示の適用期間となります(参照*9)。

    二段階開示の仕組みにより、企業はSSBJ基準に基づく開示の初年度にまず開示体制を整え、翌年度の第三者保証導入までに保証対応の準備を進めることが可能になります。段階的な移行措置を活用して実務を定着させることが、制度への対応を安定させるうえで有効です。

    第三者保証対応の重要性

    保証義務化の時期と範囲・水準

    第三者保証は、SSBJ基準に基づく開示義務化の翌年から段階的に導入 する方針が示されています。保証制度の適用開始時期から2年間は、SSBJ基準に基づくサステナビリティ関連財務情報開示のうち、Scope 1及びScope 2の温室効果ガス(GHG)排出量に関する情報、ガバナンス並びにリスク管理に対する保証を義務付ける方針が示されています。3年目以降の保証範囲については、国際動向などを踏まえて今後検討する見込みです(参照*13)。

    保証の水準については、企業に過度な負担を課すことなく第三者保証制度を円滑に導入するため、限定的保証とすることが適当とされています。合理的保証への移行についての検討は行われません(参照*10)。限定的保証は、合理的保証よりも手続きの範囲が限られるものの、開示情報に重大な虚偽表示がないことについて一定の確証を提供する仕組みです。

    国際保証基準ISSA 5000の位置づけ

    サステナビリティ情報の第三者保証に関する国際的な枠組みとして、ISSA 5000(国際サステナビリティ保証基準)が整備されています。2024年11月、国際監査・保証基準審議会(IAASB)がサステナビリティ情報全般の保証について定めたISSA 5000を公表しました。さらに2025年1月には、国際会計士倫理基準審議会(IESBA)が保証業務における倫理や独立性を定めたサステナビリティ保証に関する国際倫理基準(IESSA)を公表しています。これらの基準は今後、サステナビリティ情報の第三者保証におけるグローバルスタンダードになると考えられています(参照*11)。

    ISSA 5000は、保証業務の実施者がサステナビリティ情報の保証業務を行う際の要求事項を定めたもので、国際的な保証実務の断片化を防ぎ、質の高い保証業務を一貫して実施するための基盤を提供します(参照*12)。日本においても、保証業務はISSA 5000やISQM 1、IESSAと整合性が確保された基準に準拠して実施する方向性が示されています。

    保証業務実施者の要件と登録制度

    サステナビリティ情報の第三者保証を実施できる者について、日本では登録制度が導入される方針です。金融庁は、保証業務実施者は金融商品取引法の下で登録制に従うこととし、同法に定める登録要件を満たす者であれば、監査法人でもそれ以外でも登録可能であるとしています(参照*8)。

    任意の保証では監査法人(そのグループを含む)以外が担う例も多く、監査法人以外の者も保証を提供できる制度を構築することが検討されています。任意の保証を受けている企業のうち、半数以上が監査法人やそのグループ以外の者から保証を受けています(参照*10)。特に、環境負荷測定(GHG排出量の精緻な算定等)や社会性の評価など、科学的・工学的な観点を含む高度な専門知識が求められるテーマにおいては、監査法人に限らず、独自の専門的知見と実績を備えた国際的な認証機関などをパートナーとして選定するメリットも大きく、企業にとって重要な選択肢となります。

    保証業務の実施にあたっては、国際基準であるISSA 5000、ISQM 1、IESSAと整合性が確保された基準に準拠することが求められます(参照*13)。企業が保証業務実施者を選定する際には、登録要件を満たしているか、準拠する基準が国際基準と整合しているかを確認するとともに、自社の事業特性やデータ管理の課題に合った専門性を持つパートナーであるかを見極めることが不可欠です。

    企業が今から準備すべきこと

    人材育成と社内体制の構築

    SSBJ基準への対応では、開示情報の作成に携わる人材の育成が欠かせません。適切にデータを収集・集計して開示情報を作成するためには、関連する業務の担当者が取り扱う情報について十分に理解することが求められます。開示情報の作成に関わるのはサステナビリティ推進業務の担当者だけではなく、さまざまな部署の担当者と協力してデータを集める必要があります(参照*14)。

    企業にとって重要と判断されるサステナビリティのリスクと機会を明確にし、財務に与える影響を認識したうえで、社内における情報の整備を進めていくことが求められます(参照*6)。部署横断的な連携体制を早期に構築し、担当者間でSSBJ基準の開示要求事項への理解を共有しておくことが、円滑な対応につながります。さらに、サステナビリティ開示基準は一度策定されて完了する性質のものではなく、国際的な動向に合わせて絶えず進化しています。実際にSSBJは、ISSB基準の改訂に伴い改正基準を公表するなど、継続的な基準のアップデートを行っています。そのため、開示体制を一度構築して満足するのではなく、グローバルな基準改訂の動向を継続的にモニタリングし、変化へ柔軟に適応できる体制を維持することが、中長期的な企業価値の向上において重要です。

    データ収集・集計プロセスの整備

    開示対象となるサステナビリティ情報は、連結グループベースでの環境・社会データの収集やバリューチェーン全体にわたるScope 3排出量の算定など、多くの企業がこれまで経験したことのない範囲に及びます。内部統制やITインフラの整備も不可欠です(参照*5)。

    現状ではExcelなどを利用してデータ収集・集計を行っている企業も多いものの、サステナビリティ関連データを管理するシステムを導入することで、入力作業にかかる時間が減りミスの発生も防げるようになります。さらに、作業プロセスを含めた証跡データがシステム上に保存されるため、第三者保証において検証人から問い合わせを受けた場合に、担当者への確認を省ける場面があるなど効率的な対応が可能になります(参照*14)。

    保証取得に向けた数カ年計画の策定

    第三者保証への対応は単年度で完結するものではなく、中長期的な計画に基づいて進めることが重要です。保証取得に向けた取り組みを始める際は、いつまでに保証を取得するか、保証範囲を拡大するかを取り決めた数カ年計画を最初に策定し、この計画に沿って進めることが望ましいとされています(参照*15)。

    業務習熟の観点では、保証が義務づけられる時期よりも前から一部のサステナビリティ情報について保証を取得する、あるいは経過措置期間から義務化対象外のサステナビリティ情報について保証を取得するように計画することも有用と考えられています。義務化の時期から逆算してマイルストーンを設定し、社内体制の構築やデータ整備と連動させたスケジュールを組むことが、実効性のある準備につながります。

    おわりに

    SSBJ基準に基づくサステナビリティ情報開示と第三者保証の義務化は、2027年3月期の大規模企業から順次始まります。有価証券報告書での開示体制の構築、データ収集プロセスの整備、保証取得に向けた数カ年計画の策定など、対応すべき事項は多岐にわたります。

    義務化のスケジュールから逆算すると、準備に充てられる期間は限られています。自社の適用時期を確認し、人材育成やシステム整備を計画的に進めることで、制度への対応を着実に前に進めてください。

    参照

    (*1) SSBJ – サステナビリティ基準委員会(SSBJ)  
    (*2) 金融庁 – 金融審議会サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ 中間論点整理  
    (*3) SSBJ – サステナビリティ開示基準
    (*4) dlri.co.jp – 【1分解説】有価証券報告書でのサステナビリティ情報の開示と保証の義務化とは? | 加藤 大典 | 第一ライフ資産運用経済研究所
    (*5) Institute for Social Vision & Design (ISVD) – Sustainability 2026 Crisis — The Challenges Japanese Companies Face Ahead of Mandatory Information Disclosure — Institute for Social Vision & Design
    (*6) 月間資本市場 – 有価証券報告書におけるサステナビリティ情報の開示状況(TOPIX100構成銘柄)
    (*7) 金融庁 – 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正案の公表について
    (*8) 金融庁 – 第56回金融審議会総会・第44回金融分科会合同会合議事録
    (*9) 内閣府令第五号(令和八年二月二十日)  
    (*10) 金融庁 – 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関するワーキング・グループ」(第8回)議事録
    (*11) IAASB – International Standard on Sustainability Assurance 5000, General Requirements for Sustainability Assurance Engagements | IAASB
    (*12) IAASB – SUSTAINABILITY ASSURANCE ISSA 5000
    (*13) 金融庁 – 金融審議会「サステナビリティ情報の開示と保証のあり方に関する ワーキング・グループ 報告 2026年1月8日」  
    (*14) 経済産業省 – サステナビリティ関連データの収集・活用等に関する実態調査のためのアンケート調査結果
    (*15) 日本総研 – SSBJ対応に向けたサステナビリティ情報の第三者保証取得のポイント | 塩谷萌



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