サステナビリティ(持続可能性)の観点から見た航空宇宙の未来:パート1

世界中の組織のリーダーたちが世界の再構築に取り組んでいるとき、私たちは過去から学び、現在を確実に行動しながら、将来の可能性について理解しようとする必要があります。多くの分野が不確実性による影響を受けている現在、航空宇宙の未来がどうなるのか、何が変わらず、何が変わるのかを把握する良い機会だと思います。

社会および消費者の意識が高まり、透明性の向上を求める国民の声と相まって、航空宇宙において説明責任を問われるような変化が起こることは目に見えています。非営利団体も、その株主も。より接続され、デジタルで生産性の高い世界において、問題のある質問に答えて企業レポートを発行するだけが課題ではありません。企業は、幅広い知識を持ったステークホルダーから寄せられる難しい質問にも、確実に答えを出す必要があります。これは今に始まったことではありません。というのも、この業界は真の営利事業として誕生して以来、常に世間の厳しい目にさらされ、その結果、進化を余儀なくされてきたからです。過去50年間で、燃料/乗客/Kmを70%削減したという事実によって実証されています。

将来的には、航空宇宙ビジネスが目的主導型であることが確実となり、「株主価値を超えて」進むことが重要な推進力となるでしょう。

制限が解除され、組織がコアビジネスに重点を置くようになると、パンデミックの際に見られた、そして今後さらに重要になるであろう展開の一つが、航空宇宙セクター内、および他の産業とのコラボレーションの強化です。このような協力関係は、成長への真の助けとなり、企業の成熟の証となります。しかし、完全なコラボレーションを実現するためには、競争法などの障壁があり、「コラボレーション疲れ」もあります。このようなアプローチには、これまでとは全く異なる考え方が必要です。

しかし、将来はどうでしょうか?電気推進やスマート新素材などの進化したテクノロジーが、この業界にさらなるチャンスをもたらすことは間違いありません。

新しいテクノロジーが追加された新型機が就航するのを目にするでしょうが、課題及び影響は既存の航空機の管理とアップグレードから来るでしょう。間違いなく訪れるチャンスを最大限に生かすためには、適応力を身につけることが、企業にとっても、この分野で活動する組織の文化にとっても、非常に重要な考え方となります。同様に、新たなテクノロジーや素材が日常的に使用されるようになったとしても、バランスのとれた見方を続けていく必要があります。例えば、先端材料の使用には、軽量化や燃料消費量の削減で大きなメリットがあります。ですが、新素材及びそれを構成するコンポーネントがうまく設計されていないと、コストや回収プロセスの複雑さから再利用できず、「抽出、生産、使用、廃棄」という直線的な思考になってしまいます。しかし、設計から再利用、修理、改修、再生産、および使用済み製品のリサイクルに至るまで、循環型経済の原則を用いてクローズドシステムを構築することにより、投入資源の使用を最小限に抑えることができます。このアプローチはまた、廃棄物、汚染、そして重要なことに二酸化炭素の排出を削減するだけでなく、製品、機器、インフラストラクチャをより長く使用することで、これらの資源の生産性を向上させます。循環型の原則が業界に与える影響の設計及び管理の一部であることを引き続き確認する必要があります。

私たちの習慣は変わるでしょうが、国際航空運送協会(IATA: International Air Transport Association)によるパンデミック前の最新予測では、世界の旅客数は2036年までに倍増し、年間78億人になるとされていました。この予測は引き続き有効かどうか疑問に思います。

筆者について

Martin Townsend - BSI 持続可能性・循環型経済グローバルヘッド

彼のこれまでのキャリアにおいて、環境規制機関としての活動、英国の大臣への助言、都市の市長たちとの協働、そしてあらゆる規模の企業との協働により、サステナビリティが実現し、ビジネスの成功を可能にするものと見なされるようになっています。Martinは、2019年11月に持続可能性・循環型経済のグローバルヘッドとしてBSIに入社し、また、公共及び民間セクターの組織の成功を支援するためにいくつかの諮問委員会にも参加しています。

Brendon Hill - BSI航空宇宙セクターグローバルヘッド

航空宇宙及びエンジニアリング分野で40年以上の経験を有するBrendonは、BSIの航空宇宙セクターの戦略的方向性を牽引しています。彼は、業界団体と協力してイノベーションを推進し、国際的な講演者として、この分野の安全・安心な未来をリードしています。これまで、英国陸軍士官および航空機エンジニアとしての26年間を含み、品質マネジメントシステムの構築および実施、英国陸軍航空隊への技術サポートを行ってきた経験があります。また、製造セクターのグループ品質マネージャとして業界経験も積んでいます。