事例紹介:FSSC 22000認証
株式会社特香園

代表取締役社長 桒畑 政茂 様

代表取締役社長 桒畑 政茂 様

BSIグループジャパンは、株式会社特香園(鹿児島市南栄3-11-18 代表取締役社長 桒畑 政茂 様)へFSSC 22000(食品安全認証スキーム)認証を2012年より行っています。

2017年9月4日に東京で開催されたGFSI (世界食品安全イニシアチブ)の食品安全イベント GFSI Focus Day Japan 2017にて、代表取締役社長 桒畑様が「食品安全規格活用の成功事例」としてご講演されました。今回はFSSC 22000の成功事例として選ばれた特香園様に、運用方法や工夫等を皆様と共有させていただきたく、インタビューの場を設けさせていただきました。

今日、HACCP義務化等で食品安全への関心はますます高まっており、食品関連組織はより安全・安心な食品の提供を確実にする必要があります。今回ご紹介する株式会社特香園様は、食品業界の中でもいち早く”食品安全”の重要性に注目し、多種多様な市場・顧客の要求に対してより柔軟に対応できる体制を構築されています。

お客様から絶大な信頼得て、“鹿児島茶ブランド”を牽引する企業となった株式会社特香園様に、FSSC 22000の認証取得きっかけとなった経緯、また今後の展望などについてお話を伺いました。


まず御社について簡単にご紹介いただいても宜しいでしょうか? 


弊社は1946年に設立致しました。当初は小売業として業を成していましたが、先代の知り合いの茶農家さん方から持ち寄った茶葉を持って消費地へ行商を始めたことで、卸売業の方も強化し、事業を拡大させていきました。2000年には業界初となる夜間無人操業を可能とした完全自動化ラインを完備した新工場を落成し、生産能力向上・製造コスト削減・高品質で低価格な顧客要請への対応を可能としました。安心・安全な生産管理体制を維持し、飲料メーカーや大手流通業者等への販路拡大へと繋げることで、“鹿児島茶ブランド”の推進を強くけん引しています。

また、弊社は優良茶生産にこだわり、1966年に初となる大臣賞の受賞以来、通算して農林水産大臣賞5度、経済産業大臣賞5度、と通算で十度もの大臣賞を受賞し、高く評価されています。

また2014年に初めて開催された「日本茶AWARD」において、全国より点281点出品されたなかから、弊社主力商品である「雪ふか」が、うまいお茶部門で総合優勝し、最高賞であるプラチナ大賞を受賞するなど、“鹿児島茶ブランド”の全国的な認知度向上に多大な貢献を果たしています。

また、私自身も、全国茶審査技術競技大会において、64年の歴史の中で人13人しか存在しない、茶葉鑑定の最高位を表す「十段」を取得し、更なる優良茶生産への探求を日々続けています。

 

FSSC 22000 の導入に至った背景やきっかけ、目的をお聞かせ下さい。 


まず初めに、私たちの大前提にある目標として「安全・安心・良質な”鹿児島茶”を多くの人に楽しんでいただきたい」という思いがあります。当時から新技術や新型機械の導入などお客様に嗜好に合わせて提供できる体制を整えてきましたが、今後の長期的な発展とブランド力の向上を考慮した際、一番のキーファクターは“食品安全”になると思ったのが最初のきっかけです。

代表取締役社長 桒畑 政茂 様

正直な所、当時の茶業界は、取引先からの認証取得の要望が少なかったこともあり、“食品安全”への意識はそれほど高くありませんでした。しかし大手サプライヤーや食品業界全体が食品安全への関心を高まっていくのを見て、いずれ茶業界においても”食品安全”が重要な要素となると確信しました。

認証自体はISO 22000を2008年に導入しましたが、FSSC 22000が発行された2010年、GFSI (世界食品安全イニシアチブ) の取り組みや理念に感銘を受けたこと、またTS 22002-1(食品製造業向けに制定された前提条件プログラムの国際規格)の内容に共感できたことを受け、すぐにFSSC 22000認証を取得することを決めました。4年後の2012年FSSC 22000を取得しましたので、準備段階を含めると約10年間運用していることになります。

 

その10年(2008年に導入したISO 22000から、現在のFSSC 22000まで)の中で、一番ご苦労された点は何でしょうか? 


一番大変だったのは、導入当初時に現場の協力を仰ぐことでした。

これは多くの方に同様の経験があると思うのですが、食品安全のために、従業員に意識を変えてもらう事は非常に難しい事です。というのも、現場は常に効率重視の姿勢で作業されている方が多い一方、食品安全を考慮してもらうことは、従業員の作業増加に繋がる場合があります。それと同時に、多くの従業員は今まで慣れ親しんだ方法で対応したいという考えもあり、導入当初は抵抗・疑問の声が少なくありませんでした。

また、食品安全を徹底すると同時に、クレーム報告も徹底したのですが、その対応への抵抗もありました。

茶園というのは畑で扇形を形成しており、上面にお茶以外の異物が乗りやすいのです。そして収穫時にそのまま上面を刈り取る訳ですから、原料である荒茶に異物が混入していることが、間々あります。当然弊社の製造ラインで、この異物を取り除く訳ですが、取れた異物を供給者にクレームとして報告せねばなりません。

当時は他社からのクレーム報告も少なかったようで、従業員・供給者に弊社のクレーム処理を対応していただくことが多くなってしまい、煩わしい思いをさせてしまったこともありました。

 

そういった声に対してご苦労されたと思いますが、最終的にどのようにご理解いただいたのでしょうか? 


やはり受注拡大に繋がったというのが一番の要因かと思います。安心・安全な生産管理体制を構築することで、飲料メーカーや大手流通業者等への販路拡大へと繋がりましたので、従業員には食品安全の重要性と、目に見える成果の両方を感じてもらうことができました。

代表取締役社長 桒畑 政茂 様

これは一例ですが、弊社が製造する某大手量販店様のPB商品・知覧茶の出荷本数の推移が、取組当初である2011年の5万本から、2016年には50万本に迫る出荷本数を達成することができ、毎年増加を続けています。

もともと某大手量販店様の取引先で十分な量の茶葉が確保できなかったのが、この知覧茶を置くきっかけになったのですが、消費者の皆様からいただく知覧茶の評価が年々大きくなり、それに併せて年々出荷数も上がっていきました。弊社の茶葉の品質を分かり易い形で認めていただいたので非常に嬉しかったですね。

またこの某大手量販店様への取引条件として、ISO 22000・FSSC 22000等の認証が必須になっていましたので、その恩恵が良いチャンスに繋がったと言えると思います。また、輸出につきましても、各国での販路を開拓し、仕向け先の要望に合致させることで、年々増加しています。

 

他にFSSC 22000導入によって良かった点はございますか? 


マネジメントシステムを継続・改善する癖が社内で定着したことは大きかったですね。

従業員の食品安全に対する意識の向上したことで、食品安全チームを中心としてマネジメントシステムがスパイラルに改善されており、PDCAもよく回ってきています。ハザード分析・評価等においても、バリデーションという意味で、『やっていることは、正しいことをやっているか』まで踏み込んで、食品安全チームで検討するようになりました。

こういった従業員の取り組みは、経営者としての私自身の安心にも繋がっています。

やはり経営者にとって食品事故とは、大変脅威なものであり、甚大な被害を与えてしまう可能性があります。

もちろん継続的改善を心掛け安心して製造できる仕組みを構築し続けていく必要がありますが、FSSC 22000は、経営層のリスク管理として、最も信頼出来る必須なシステムであると考えています。

また二者監査の際に大手量販店の方・サプライヤーの方に来ていただく機会があるのですが、そこで弊社の取り組みに対してお褒めいただける事があり、それは私にとっても従業員にとっても最高の喜びとなっています。

 

BSI を審査機関としてお選びいただいた理由と、審査の印象をお聞かせください。 


代表取締役社長 桒畑 政茂 様

導入時にコンサルティング会社を利用して構築を進めていたのですが、そこから紹介されたうちの1社がBSI殿でした。私の方も信頼のおける認証機関にお願いしたいという思いがあったので、事前にBSI殿の実績や評判を調べさせていただき、その結果に納得してお願いすることにしました。またBSI殿の営業担当者様と話をする機会があり、有効性や目的等を丁寧にご説明いただいたことも決めた要因の一つです。

審査に関しては、当時はFSSC 22000が発行されたばかりということあり、色々な面を厳しく見てもらえたと思います。厳しい要求に応えるのは必ずしも簡単ではありませんでしたが、そういった指摘はいずれ消費者からも指摘されるポイントだと思って対応しました。今でも色々な厳しいご指摘を受けることがございますが、そういった指摘を真摯に対応することで会社として成長することができる、消費者の厳しい目にも対応できると捉えています。

 

今後の展開と目標をお聞かせください。 


「より多くの皆様に鹿児島茶の美味しさを楽しんでいただきたい」、その一心です。

私は茶師として茶葉を鑑定する機会も少なくないのですが、やはり鹿児島茶の美味しさが一番好きです。

先ほどお話しした某大手量販店様の例でも経験しましたが、一度飲んでいただければ美味しいお茶であるとわかってもらえる自信があります。

そのためには弊社だけでなく、産官一体となって多様化する消費者の嗜好を把握し、求められる美味しさを追求し、品質を向上させて生産する必要があると考えています。地域の連携が良くなれば必然的に鹿児島茶のブランドは向上すると思っています。また近年は海外でも茶葉に対する高い需要もあり、海外のブランド向上も重要な要素と考えています。

今後も随時BSI殿の指摘を活かして改善を続け、安全・安心・良質な”鹿児島茶”を多くの人に広めていきたいと思います。 

 

本日は誠にありがとうございました。 

 


株式会社特香園様に関して

今回インタビューにご協力頂きました株式会社特香園様の詳細情報に関しては、下記のリンク先よりご参照頂けます。特香園様の会社概要、商品、受賞歴等がご紹介されています。是非ご覧ください。

URL:http://www.tokkoen.co.jp/