北海道警察
北海道中小企業サイバーセキュリティ支援ネットワーク インタビュー(1/3)
BSIジャパンは、2020年2月6日(木)に北海道札幌市にて開催された「サイバーセキュリティセミナー2020」にて、「クラウドセキュリティ対策がなぜ重要なのか」と題した講演をさせていただきました。
「サイバーセキュリティセミナー2020」は北海道警察の事務局で担っている「北海道中小企業サイバーセキュリティ支援ネットワーク」が主催するイベントです。「北海道中小企業サイバーセキュリティ支援ネットワーク」では北海道内で事業活動する中小企業様のサイバーセキュリティ対策を支援しており、経営層、情報管理・運用責任者向けのセミナー等を開催しています。
今回は北海道警察 サイバーセキュリティ対策本部 指導官 北海道警視の石川学様、北海道警察 サイバーセキュリティ対策本部 対策班長 警部の船橋哲哉様に、北海道におけるサイバーセキュリティ対策の現状や課題、また今後の取り組みについてお伺いする時間をいただきました。是非ご一読ください。
▲「サイバーセキュリティセミナー2020」の様子
北海道内でも注目を集めるサイバーセキュリティ・クラウドセキュリティ
BSI 筒井: 2/6に開催されたセミナーですが、悪天候の中約160名近くの方にお集まりいただき、私達BSIも講演者としてクラウドセキュリティに関するお話をさせていただき、貴重な機会をいただくことができました。改めてここ北海道でサイバーセキュリティが多くの方から注目を集めていると感じましたが、開催されたご感想は如何でしたか?
船橋様:非常に多くの方にご来場いただき、私たち北海道警察としても貴重な啓蒙活動の機会となりましたので、うれしい限りです。昨日の講演ではBSI様はじめ、サイバーセキュリティの最新事情やクラウドセキュリティに関してわかりやすくご説明いただきましたので、北海道の多くの企業様にご理解いただけたと感じています。北海道は土地が広いので、これから多くの方がテレワーク(在宅勤務)で働く時代になります。これから多くの方がクラウドを経由して在宅で業務を進める機会が多くなる背景もあり、クラウドセキュリティは北海道にとって必須項目と考えています。
▲北海道警察 サイバーセキュリティ対策本部 対策班長 警部 船橋 哲哉 様
BSI 筒井:セミナー終了後は多くの方から質問がございましたね。
石川様:そうですね。クラウドセキュリティは北海道でも旬の話題でもありますし、内容に関してもポジティブなフィードバックをいただくことができました。私たちとしても皆様に知っていただく機会を提供できたという点で、満足しています。クラウドセキュリティの浸透度はまだまだ低いのが現状です。概念も用語もまだ知らない方が多くいらっしゃいますし、そういった方へ情報提供をすることができたのも大きかったです。
BSI 筒井:今回のセミナーも活動の一環だと思いますが、北海道警察様の事業者向けサイバーセキュリティ対策について、主な取組内容をお伺いしても宜しいですか?
石川様:はい。当対策本部では、他官庁や各商工団体を構成機関とする「北海道中小企業サイバーセキュリティ支援ネットワーク」という組織の事務局を担っておりまして、ここを基盤に北海道内で事業活動する中小企業様のサイバーセキュリティ対策を支援させていただいております。企業におけるサイバーセキュリティ対策、セミナーやメール等を通じた最新情報のご紹介など、北海道全体に安全なセキュリティ環境をお届けできるように支援活動をさせていただいております。
北海道は土地が広いですので、こういった支援活動を北海道全体にお届けするには、各地の商工会議所様との連携が必須になります。道内には194の商工会議所・商工会様が存在します。そのすべての団体と連絡が即座に取れるシステムを2019年に構築いたしました。Emotet(エモテット)などのマルウェアによる被害が道内で発生した際には、即座に対応できる状況を把握し対応できる体制を構築しています。
▲北海道警察 サイバーセキュリティ対策本部 指導官 北海道警視 石川 学 様
人材育成・教育支援の重要性
船橋様:人材育成・教育支援に関しても力を入れています。皆様にサイバーセキュリティ対策を意識していただくには事前の教育が必須になります。各企業のご担当者様だけでなく、従業員一同が同じ視点でサイバーセキュリティの重要性を理解していただくことが、事故を防ぐ一番の要因になると思っています。
BSI 筒井:確かに。とはいえ、サイバーセキュリティ業界は常に新しい対策に講じる必要があるので、精通した人材の確保が難しいと言われている業界でもありますが、北海道ではいかがでしょうか?
▲BSIグループジャパン営業本部 ICT&金融セクター営業部 筒井 浩二朗
石川様:おっしゃる通り、サイバーセキュリティに精通した人材を確保するのに皆様たいへん苦労されています。
私たち警察こそ、新しいサイバーセキュリティ関連情報に触れることも、また、「仕事」という領域で人材育成を進めることもできますが、民間企業ではこのような対策を講じることは中々難しいと思います。新しい対策が必要になったものの、社内で対応できる人材がいなくて困っているという声もよく聞きます。特にサイバーセキュリティ業界は精通された多くの方が東京や大阪等の都市部に集中してしまっているので、北海道内で精通された人材を育成し創っていくということは、私たちの重要な役割となっています。
BSI 筒井:なるほど。確かに都市部の企業でもサイバーセキュリティは外部委託している場合が多いので、精通された人材が都市部に集中してしまっているのでしょうね…そこは今後業界として解決していかなければならない点なのですが。
船橋様:私たちとしては、若い世代の教育がキーポイントになるとみています。北海道内の学校で講演させていただく機会があるのですが、学生でサイバーセキュリティ対策を理解されている方は多くありません。サイバーセキュリティ対策に従事されている方が何をしているかわからない。だからセキュリティエンジニアが将来のキャリアの選択肢にならないというのが現状です。今、私たちは北海道内の大学と連携し、学生の方に、セキュリティエンジニアというのはどういう仕事なのか、サイバーセキュリティ対策はどういう重要性をもっているのかということを説明する機会を増やしています。学生の方がサイバーセキュリティ対策を理解し興味を持っていただくことでセキュリティエンジニアを目指す方を増やす、その結果北海道内で精通された人材が増えるというビジョンの基活動している最中です。
BSI 筒井:教育からの底上げということですね。確かに、他の地方部でもセキュリティエンジニアを目指すことができる教育機関が続々と増えている話を聞きました。民間企業のセキュリティエンジニアの方が講師や准教授として招かれているようで、新しい雇用や積極的な人材交流が盛んになってきているようです。
石川様:私たちも色々な情報を提供していますが、やはり若いうちにから重要性を理解していただいていただく方が、効果的なセキュリティ環境の構築につながりやすいというのは感じています。セキュリティのテクニカルな部分は教育機関で学べますが、実際に世の中でどういったサイバー事故が起きているかの情報提供や倫理観を育成するというのは、私達警察の役目だと思っています。多くの学生の方にサイバーセキュリティを正しく理解していただくことで、北海道全体のセキュリティ環境の底上げにつながると思っています。