複合材料とは、簡単に言えば、2つ以上の異なる素材を組み合わせて作られた材料のことで、組み合わせることにより、個々の構成要素よりも高い強度を得ることができます。人工的な複合材料として知られる最初の例は、紀元前3400年に遡り、古代メソポタミア人が木片を異なる角度で重ね合わせて接着し、合板を作ったと言われています。
これらは、製造業のあらゆるセクターにおいて重要かつ成長している領域です。2016年、 Composites Leadership Forum(CLF) は、英国における複合材部品の生産量が毎年16%ずつ増加し、2030年には87億ポンド(約1兆3254億円)に達すると予測しました。
現在、複合材料の代表的な例としては、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)があります。CFRPは、非常に軽量であり腐食しない素材で、自動車の製造に幅広く使用されています。
CFRPなどの素材の普及は、人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)などのテクノロジーを用いたデジタル製造方法によってスマートファクトリーを実現する「第4次産業革命」と呼ばれるものの一環でもあります。
英国では、自動車セクターでの複合材料の用途は、F1レースでのCFRP材料の使用に始まり、その後、ニッチなスポーツカーの生産に移行しました。しかし英国では、低コストの複合材部品を大量に供給するために重要なサプライチェーンが発達していませんでした。
新しい複合材料規格の必要性
さらに、急速なテクノロジーの進歩が自動車業界の変化を促しています。業界では、プリプレグやオートクレーブ製造のような既存の手法を超えた材料及び製造技術を用いて、新たな量産型複合材部品を開発するための重要な開発作業が行われています。
自動車メーカーがイノベーションを推進し、先進的な製品を市場に投入するために利用可能な規格は数多くあります。業界全体の協議結果は、Composites UKがBSIのために作成し、ビジネス・エネルギー・産業戦略省の支援を受けて、2019年のレポートとして公開されました。この協議の結果は、輸送セクターでの複合材料の使用を支援するためのBSIの規格化戦略の策定に使用されます。このレポートでは、すべての産業分野における複合材料の使用に関連する約1000の規格が特定されています。
しかし、このレポートによると、英国の輸送セクター、特に自動車業界では、複合材料に関する既存の規格が目的に適っていないと考えているようです。英国の規格は、先端材料分野で起きている急速な発展に追いついていないと言われています。また、企業が見つけるのも困難でした。
複合材料に関する規格の改良および更新は、自動車セクターにおいて複合材料の新しい用途を広げるために重要です。適切な規格は、エンドユーザーの信頼を大きく向上させるとともに、新たなテクノロジーや新素材の革新と商業的導入を促進させます。
組織が適切な複合材料関連の規格を見つけられるよう、サポート体制が必要です。レポートでは、市場の潜在能力を引き出すために、規制、コード、規格の修正または追加が必要な領域が特定されています。
また、新たな規格開発戦略が必要な領域として、複合材料関連の品質保証、データ生成、リサイクルが挙げられています。
課題の克服
後者の場合、自動車セクターは欧州のOEM(納入先商標による受託製造業者)に適用されている耐用年数に関する法律の年次目標を遵守しなければならないことに留意することが重要です。現在、各車両の平均重量で計算すると、回収率は95%、リサイクル率は85%となっています。
これらの要求事項は、複合材部品の普及に課題をもたらす可能性があります。なぜなら、多くの形態の材料をリサイクルできる技術が存在するにもかかわらず、英国のメーカーはリサイクル品から価値を生み出すためのサプライチェーンが依然決定されていないからです。
特に自動車セクターでは、火災時の安全性、不連続または擬似等方性材料に対応するための試験基準、製造のための設計に関するガイダンスなど、新しい複合材料の規格が必要であることが明らかになっています。
規格の開発はすでにこの領域で活発に行われています。例えば、PRI/42 (繊維強化熱硬化性プラスチックおよびプリプレグ) および RPI/13 (高度なテクニカルセラミック) の活動は特に重要です。
上記の知識とCLFからの継続的なサポートを武器に、BSIはCLFと協力しながら、複合材料やその他の先端材料の使用を可能にし、今後何年にもわたって競争力、安全性、性能、環境面でのメリットを実現できるよう支援していきます。