ISO 9001:2015年度版における
4.3項の適用範囲とその審査について
ISO 9001:2015年度版と従来の2008年度版の適用範囲に関する考え方との相違等、お客様からのお問い合わせも多くあることから、規格の意図する内容と審査での対応を改めてご案内させて頂くことといたしました。規格の趣旨をよくご理解頂き、審査へのご協力を頂けますようよろしくお願いいたします。
※本件に関する内容を書面にてお求めの場合は、下記よりダウンロードいただけます。
1.ご案内の経緯
ISO 9001:2015(以降2015年度版と表現します)においては、適用範囲に関する考え方について、より明確な要求が以下の通り示されました。
-
組織が提供する製品及びサービスへの適用可能性について「要求事項が適用可能ならば、組織は、これらをすべて適用しなければならない(ISO 9001:2015 4.3項引用)」
また認定機関であるJAB(公益財団法人 日本適合性認定協会様)からも、下記のWebサイトにて適用可能性に関するQ&Aが提供されています。
ISO 9001を受審いただいているお客様には、2015年度版をできるだけ効果的にご活用いただき、品質マネジメントシステムが皆様の意図した成果の達成に向けて有効性を発揮できるようにするために、規格の意図をより明確にご説明させていただくことといたしました。
2.規格の意図する内容
ISO 9001:2008では、その適用範囲が「製品」となっていたことから、顧客に提供される「製品」を主体に規格を適用することを考慮した結果、例えば設計・開発などの要求事項について、「製品」の設計をしないため適用除外とするという考え方が多く見受けられ、容認されてきました。
2015年度版では、その適用範囲の考え方を「製品」から「製品及びサービス」という表現に変更され、より広範囲への適用が可能であるとされました。
2015年度版では、適用範囲を定めるために以下のように要求されています。
- 「外部や内部の課題」「密接に関連する利害関係者の要求事項」「組織の製品及びサービス」を考慮し(ISO 9001:2015 4.3項引用)
- 「ある要求事項が、組織の品質マネジメントシステムの適用範囲でどのプロセスにも適用できないことを決定できるが、製品及びサービスの適合が達成されないという結果を招かない場合に限る」(ISO 9001:2015 A.5項引用)
- 「適用不可能なことを決定した要求事項が、組織の製品及びサービスの適合並びに顧客満足の向上を確実にする組織の能力または責任に影響を及ぼさない場合に限り、この国際規格への適合を表明してよい」(ISO 9001:2015 4.3項引用)
まずは、規格のすべての要求事項に関してその適用可能性を再度ご検討され、適用を柔軟にご判断いただくことでより効果的な品質マネジメントシステムの構築や、組織の意図した成果の達成及び顧客満足の向上などにつなげていただくことが期待されます。
3.設計・開発に関する規格の意図と審査対応
設計・開発に関しましては、その定義も変更されています。
- ISO 9000:2008では「要求事項を製品、プロセス又はシステムの規定された特性又は仕様書に変換する一連のプロセス」
- ISO 9000:2015では「対象に対する要求事項を、その対象に対するより詳細な要求事項に変換する一連のプロセス」
つまり、組織が適用範囲として定めた顧客に提供する製品やサービスの要求を、組織自らその要求にこたえるためにさらに詳細にする行為が、設計・開発行為であると定めています。
今までは、組織が提供する「製品」に対する直接の設計・開発プロセスがない場合には適用除外として取り扱ってきましたが、今後はより広範囲のプロセスを設計・開発行為として取り扱うことが可能となりました。前項で申し上げました通り組織のより広い範囲でこの要求事項を展開していただくことが期待されます。
なお、特に従来多くの組織で適用除外とされていましたいくつかのプロセスについて、一般的な判断を以下に記載させていただきました。あくまで事例ですので、組織の状況(ISO 9001:2015 4.1項)や利害関係者の要求事項(ISO 9001:2015 4.2項)又は組織のリスクと機会に応じて個別の判断は異なりますのでご注意ください。
|
Scope(適用範囲) |
ISO 9001:2008 |
ISO 9001:2015 |
建設・土木業 |
土木・建築(構造物)の設計・施工の場合 |
土木・建築構造物そのものを設計・開発 →設計・開発適用 |
変更ありません。 |
土木・建築施工の場合 |
図面は施主から提供され施工のみ実施 →設計・開発除外 |
施工というサービスを提供するために必要な詳細計画・仕様を作成することが設計・開発プロセスと考えられます。 例:施工計画書、仮設計画書、技術提案 |
|
製造業 |
製品の設計・開発及び製造 |
製品そのものを設計・開発→設計・開発適用 |
変更ありません。 |
製品の製造 |
製造のみ受託しており、図面は顧客から提供され製造のみ実施 →設計・開発除外 |
製造というサービスを提供するために必要な詳細計画・仕様を作成することが設計・開発プロセスと考えられます。 例:工程設計、金型や治具の設計・開発 |
|
サービス業 |
製品の販売、・・・サービスの提供 |
製品の販売や、サービス提供というプロセスを提供しているだけ →設計・開発除外 |
製品の販売や各種サービスを提供するために必要な詳細計画・仕様を作成することが設計・開発プロセスと考えられます。 例:販売企画、サービス改善提案 |
なお、審査ではプロセスを確認させていただく中で、上記プロセスが適用不可能(存在しない)であることが確認できた場合は、従来通り適用除外(不適用)とご判断させていただきます。
4.お問い合わせ先
※本件に関するお問い合わせは、弊社 営業本部までご連絡お願い致します。
お問合せ先
BSI グループジャパン株式会社
●技術的なご相談に関してはこちら : Japan.TechnicalExperts@bsigroup.com
●その他、お問い合わせに関してはこちら : Sales.Japan@bsigroup.com